なぜおいらはAYAにこれだけの感情を移入してしまったのだろうか?
彼女と会っていたのはほんの数時間。話をしたのも合計数十分に過ぎないであろう。
可愛いい女性とお話ができてうれしいという男性として単純な感情以外はあまり
持ち合わせてはいなかった。
少し考えてみる。
すぐに思いついた。
全ては彼女の瞳だ。
普段の日常生活を送る上で、あれほど瞳に力がある人は見たことがなかった。
それは警戒心と野性味を兼ね備えた瞳だった。
あのような目を持つ人は、日常生活を営む中では出会えない。
それが原因かもしれない。
彼女は明らかに明確な目的をもって、精一杯毎日を生活していた。
いつか必ず故郷に帰るのだと。
それがAYAの瞳に現れていたのだと思う。
車が港に着いた。
結構ギリギリで、とっくに船は接岸していた。正規ボランティアの方達は一足先に船に乗り込んでおり、おいらたちは急いで船に乗り込んだ。
一番最後の乗客としてタラップを駆け足で登り上がる。
出発の合図の汽笛が湾に鳴り響く。
おかみさんとAYAが手を振って見送ってくれる。思わず涙ぐんでしまった。
AYAは笑顔だった。
船上の甲板で雄山からの噴煙を見上げる。
来る時とは違い、ほろ苦い気持ちで東海汽船の甲板にでて潮風を感じる。
昨日三宅島に来たばかりなのに、様々なことが頭の中に去来し、
少しだけ仕方なく大人になった気分だ。
正義の味方も形無しだ。
AYAという流れついた一人の異邦人の彼女を助けてくれた正義の味方は
三宅島の人々だったのだ。
船は真夏の日差しの下、粛々と東京への航路を進んでいく。