[author] Tim O'Brien
[translator] 村上 春樹
訳者の村上春樹氏がとある著作の中で「この本を訳すことで(凍り付いていた心が)本当にあたためられた」といった旨のことを書いており、それに触発されて読んだ
「まとも」であるがゆえに社会の「狂気」に適応できない主人公という話(という括りが大雑把であることには少々目をつぶって)は、まあよくあるけれど、その人物の半生にわたる心の変遷をここまで丹念に描いた作品はそうないのではないかと思う。1960年代〜のアメリカの情勢を肌感覚として知っていないと、本当の意味でこの小説で描かれた焦燥のようなものはわからないのかもしれないな。とはいえ、自分のような年代の人間でも充分にこの小説のもつパワーにやられた。圧倒されました。
自分はまだ読んでいません・・・
この本が出た2年後の1996年に、村上春樹は 「村上春樹、河合隼雄に会いにいく」−(岩波書店) のなかで、「「物語」で人間はなにを癒すのか」について語っています。
「ニュークリア・エイジ」を訳した体験が、その後の村上春樹の作品に大きく影響しているのだとしたらとても興味深いし、ある時期から大きく変わってしまったように思える彼の作品を読むための鍵になるのかもしれない。
村上氏は、自分にとって翻訳とは一種の(自己)治癒行為である、のようなことも書いていた。ものを書く人にとっては、翻訳=他のものを書く人の創作の過程を追体験すること、なのかもしれない。確かに創作にまつわる孤独を癒す手段としてこれ以上のものはないのかもしれないですね。
ニュークリア・エイジ、なかなか本格的なので機会があったら読んでみてください。本文にも書いたけれど、同時代人として読めないのが少々残念ですが。