[author] アンドレイ・クルコフ
[translator] 沼野 恭子
「憂鬱症のペンギンと暮らす売れない短編小説家。」というオビの言葉にぐぐっと惹かれて購入。
舞台はソ連崩壊後の新生国家ウクライナの首都キエフ。ウクライナといえば例の大統領選挙をめぐる疑惑の数々が記憶に新しいけれど、本作も実に、旧共産主義国家の混乱や腐敗やそれを諦めにも似た思いでやりすごしていく人々の乾いた生活感のようなものがにじみ出ていて。またそれは、物語の重要なファクターともなっている。
自分を取り巻く世界に違和感を抱きつつそれに対する自らの無力もまた受け入れている「売れない短編小説家」ヴィクトルの孤独。そしてその孤独は「憂鬱症のペンギン」ミーシャにしか理解されることがないという皮肉。なんとも滑稽なシチュエーションだけれど、不穏な空気の渦巻くウクライナが舞台ということになると、その滑稽さがカサカサとした物悲しさへと転化してしまう。そのバランスは見事。物語自体には自分としてはそれほど感銘しなかったけれど、独特の乾いた空気感は長く心に残る感じ。