音楽の都、ウィーンです。
ドナウ川沿いの3都市、ウィーン〜ブラチスラヴァ〜ブダペストを結ぶ船があるということなので、
ブラチスラヴァからウィーンまで、ドナウ川をさかのぼる形でやってきました。
しかし、この船というのが、いわゆる水中翼船というやつで、
船全体が平べったいカプセルのような形をしていて、航行中お客はその外に出ることはできません。
想像していたような、川沿いの風景をデッキから楽しむ、といったような風情はどこにもありません。
ですから、ドナウ川クルーズも、ぼくとしてはあんまりお勧めできません、よ。(そんなのばかりです)
ウィーンの街は、ひとことでいうなら、「上品」という言葉がいちばんふさわしいと思います。
(すくなくとも、バックパックを背負って歩くような街ではないことは確か)
建物も、バロック様式というんでしょうか、わりと重厚で空間のひろい建物が多いようです。
旧市街の中央には、ゴシック様式のシュテファン寺院があり、街のシンボルとなっているのですが、
街全体の雰囲気からいって、ちょっと場違いな感さえ覚えました。率直な感想として。
これまで見てきた街、プラハにしてもクラクフにしても、そんな印象を受けたことはありませんでしたので、
これはちょっとした驚きでした。
夜のウィーンの街の美しさは、文句なく格別です。
ハプスブルク家の王宮だったホーフブルク界隈は、その壮大な建築物すべてがライトアップされるので、
暗闇に白く輝くそのさまは、まったく見事としかいいようがありません。圧倒される美しさです。
コンサートにも行きました。
7月8月は、オペラ・コンサートのオフシーズンなので、心配というかほどんどあきらめてたのですが、
調べてみると、この時期にもちょこちょこコンサートは開かれているようです。
ちょうど滞在期間中には、「ウィーン・モーツァルト・オーケストラ」なる楽団が、あのオペラ座で公演するらしい、
しかもチラシをみるとこの楽団、みんな18世紀当時の格好(衣装・かつら)で演奏するらしいのです。
ちょっとおもしろそう、しかもオペラ座!、ということで、さっそく行ってまいりました。
オペラ座は、広さでいったらそれほど大きいということはありません。
(音響とか観劇のことを考えたら、このくらいが適当なのでしょう)
しかし、建物の雰囲気は、さすがに歴史というか、風格すら感じさせます。
天井には、UFOのような巨大なシャンデリアがでんと構えていたりして。
僕の席は4階の正面3列目で、ちょうど真上からオーケストラを見下ろすような形でした。
観客は、ほとんどが白人の観光客、熟年カップルが圧倒的に多い。
(マナーが悪くて、演奏が始まってもストロボをたいて写真をとったりする。さいあく)
そんなこんなで、わくわくしながら待っていると、いよいよオーケストラが入場。
みんな、たしかに18世紀の格好です。かつらをかぶって。おおー、さすが本場。
ぼくは趣味で打楽器をかじっているので、どうしてもそちらを注目してしまうのですが、
打楽器奏者は3人、ティンパニ、トライアングル、バスドラム、と並んでいます。
しかし妙なことに、トライアングル奏者が、隣のティンパニをチューニングしだしました。
そうかそうか、ティンパニ奏者はえらいから、自分ではチューニングしないんだ、さすが本場。
指揮者が入場し、いよいよコンサートの開始。1曲目はモーツァルトのなんとかいう序曲。
はっきりいって、上手じゃなかった(あれれ?)。
しかしまあ、1曲目だしな、これからこれから、ふんふん、と聴いていたのですが、
ティンパニの音を聞いたとたん、びびりました。
チューニングが、半音くらいずれてるんですわ、これが。大げさじゃなく。
「18世紀のティンパニは半音低くたたくこと」と教わるんでしょうか。本場では。
当のティンパニ氏は、楽しげに頭など揺らして、気持ちよさそうにたたいているのですが、
(でもたたき方もあまりにも素人くさいので、ちょっと怪しいなと思った)
明らかに、「C」の音が低い。低いったら低い。
ほんとに、帰ろうかなと思いました。
大してうまくない演奏に、半音低いティンパニ。観光客相手のインチキバンドなんじゃないか。
45ユーロも出したのに。(ちなみに僕の滞在している安ペンションは1泊29ユーロ)
曲の途中で、トライアングル氏がおもむろにティンパニのほうを向き、
キュキュッとティンパニの皮を締めました。ちょっと胸をなでおろす僕。
やはりモーツァルトの時代にも、ティンパニは半音低くてはいけなかったのです。
しかしなぜ、ティンパニ氏は自分でチューニングをしないんだろう?
そのなぞは、1曲目が終わったあとで、明らかになりました。
演奏が終わると、ティンパニ氏はおもむろに席を立ち、オーケストラの中央へ進み、腰をおろしました。
その手には、なぜかフルートが。
ティンパニ氏は、実はフルート奏者だったのです。
そして、トライアングル氏こそが、本当のティンパニ氏だったのです。
(バスドラム氏も、本職は別の楽器だった模様)
人手の足りない素人バンドなら、珍しい話ではないですが、
さすがに本場の「ウィーン・モーツァルト・オーケストラ」で打楽器奏者が「トラ」だったのは、
かなりびびりました、笑いました。
(この時代の曲って打楽器の出番ほとんどないですからね。あってもティンパニくらいで)
オーケストラのほうも、2部にはいって「フィガロの結婚」とか「魔笛」とかメジャーな曲になると、
安心して聴くことができました。さすがにこなれています。
アンコールは、「美しき青きドナウ」と「ラデツキー」。
モーツァルトじゃないけど、ウィーンの定番中の定番ということで、観客も納得。
ラデツキーではニューイヤーコンサートよろしく、たのしく手拍子してきました。
ちなみにティンパニ氏(元トライアングル氏)はこのとき、
ドラムセットとティンパニを横に並べ、ひとりでティンパニ・スネア・バスドラム・シンバルをこなしていました、とさ。
結論。「本場の」音楽を楽しみたいのならば、夏のウィーンに行ってはいけない。
では、この時期、ウィーン子がどうやって音楽を楽しんでいるのかというと、
「フィルムフェスティバル」と称して、市民会館前の広場に巨大スクリーンを立て、
そこで昔のオペラやコンサートを上演しているんですね。
(小沢征二指揮のガーシュイン(2003)とか、カラヤン指揮のなんとか(1985)とか)
いずれにせよ、ウィーンは「音楽の都」に間違いはないようです。
半音低いティンパニ かぁ
その辺の「横浜××楽団」の無料コンサートでも腹が立つだろうな。
笑うに笑えない。そっかー。 音楽の聖地でそんなことが許されてしまうのか。 少し悲しい。
I was pretty sad, too...