「+Diary:s」 blog no.9 - by okumiya.
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2004.09.01 | Posted by | 2004年 中欧〜アジア

デリーにやって来ました。

多くの旅人にとって今も昔もデリーは「インドの入り口」。この地からインドの混沌へと身を投じた旅人達は、あるいはこの地の人々の活力に圧倒され、あるいは熱気に疲労困憊し、あるいは嫌悪し、あるいは怖れおびえ、あるいはその文化的な豊穣さにとりつかれてしまう。しかしながら、善しにつけ悪しきにつけ、誰一人としてこの地に無関心・無感動ではいられない。インドとは、ひとことでいうとそういう国のようです。

デリーの町は大きく、ムガール帝国時代(あるいはそれ以前)の帝都として栄えたオールドデリー地区と、イギリス統治(植民地)時代に新しく建設されたニューデリー地区とに分けられます。

現在のインドの首都としての機能は、ニューデリー界隈やそれ以南の地区に広がっています。とても近代的な雰囲気で、街路樹の緑が心地よく、「インド的」な喧騒とはほぼ無縁。しかし、これが大国インドのひとつの側面であることは間違いないでしょう。(聞いたところによると、インド一の大都市ムンバイ(ボンベイ)は、ニューデリーに輪をかけて近代的だそうです)

一方、オールドデリー界隈、とくに街道沿いから一歩入った旧市街の雰囲気は、なるほど実に「インド的」です。まず人の多さにちょっと圧倒されます。ひところの原宿・竹下通りのような(たとえが古いなあ)。インドの生活者たちがどっと集まっていて、そこをまた強引にリキシャが通り、自転車が通り、牛が通ります。店は実にさまざまで、色鮮やかな香辛料の粉末を店先に並べたスパイス屋から、バイクの油圧部分だけ売っているパーツ屋まで、たぶんインドでの生活に必要なものは何でも手に入るのでしょう。各定食屋の前には、これは席が空くのをを待っているのか、それとも施しを待っているのか、粗末な衣服の人々が20人くらい、地べたに座り込んでいます。そんな古い商店の連なるちょっと薄暗い街路が、歩けど歩けど、いったい終わりがあるのだろうかと不安になるくらいに続いていました。しかし、やっと迷宮の出口らしきところまでたどり着き、表に出ると、そこは明るく太い街道沿いで、きれいに舗装された路面に自動車が行き交い、その脇には映画館や銀行が立ち並んでいるのでした。いったいこの対比はなんなのだろう? 単に「新旧」とも「貧富」ともいえないような、不思議な感覚を覚えました。

デリーの町の印象は、非常に大雑把ながら上記のような感じです。しかしながら個人的に(しかし多くの旅人が共感してくれるでしょう)一番「インドだなぁ」と思ったのは、この地の人々の活気、エネルギー(良くいえば)。悪くいえば、ずるさ、しつこさ。英語ではこれを「アグレッシブ」(侵略的な・攻撃的な)と表現するみたいです。

ぼくは幸いにも、デリーでは悪質な客引き・旅行会社などに悩まされることはなかったのですが、多くの旅人がまずこの類の洗礼を浴びてしまうらしい(要するに詐欺でお金を騙し取られてしまう)。インド人は手ごわい。百戦錬磨だから、こちらが多少用心していても、運が悪ければこの手の災難は免れないんじゃないかな、と思います。インドの人々は、もちろん悪い人ばかりじゃないけれど、たくましいというか、エネルギッシュというか、「アグレッシブ」なのは間違いないです。それがどの方向に向いているかはともかく。

たとえば、新市街の公園で休憩していたら、靴磨きの男が寄ってきてひとこと、「靴磨かない?」。ぼくはビーチサンダル姿なのですが、まあそれがとりあえず、彼にとっての観光客に対する挨拶みたいなものなんでしょう(他のサンダル姿の外人にも声をかけていたから)。それを皮切りに、いろいろ話しかけてきて、行き着くところ「むこうの店は高い。ノット・インディアン・プライス。みなビジネスだから手数料を取っている。でも、ぼくの知ってる店は、インディアン・プライス。これから見に行こう」。単純で典型的な客引きですけど、でもぼくは、この男の「ビジネスだから」という言葉にはちょっと納得しました。悪質な詐欺や脅迫や窃盗はともかく、物を外国人に高く売ることそれ自体は、そんなに悪いといえないのかもしれないなぁ、なんて思いました。ビジネスとして考えたら、誰だって同じものを高く売りたいよな(日本人だって)、なんて思ったわけです。しかも日本と違い殆どのものには「定価」なんてないわけだから(「相場」というのはあるだろうけど)。だから、もしこの男が「ぼくもビジネスだから手数料を取るけれど、他の店よりは安くするよ」といったら、もっと納得しただろうと思います。

この男に「靴磨きの仕事はどう?」と訊いたら、「ちっともよくない」といってました。そうかもしれないな。みんなサンダルだから。ともあれ、これがたとえばインド人の「アグレッシブ」さの一例。

それからもうひとつ。日中の暑い中、コカ・コーラを飲みながら町をぶらぶら歩いていたら、向こうからゴミを一杯に詰め込んだポリ袋を持った少年達が3人、歩いてくるのが見えました。ぼくはパキスタン以来、ゴミ問題にはちょっと敏感になっていたので、いや感心感心、なんて思って少年達をながめていました。すれ違いざま一人の少年と目が合ったので、ぼくはちょっと微笑みました(「えらいね」というふうに)。するとその少年は、何かひとこと「ごにょごにょ」と言葉を発すると、ぼくが左手に持っていた飲みかけのコカ・コーラのペットボトルをグイとつかみ、さっと奪い取っていきました。一瞬の出来事だったし、またその見事な手際のよさに、ぼくはあっけに取られてしまいました。後ろを振り返って飲みかけのコカ・コーラの行方を確認するのを忘れるくらいに。

もちろん、ぼくのコカ・コーラが単純に「ゴミ」だと判断された可能性もあるけれど、中身は半分くらいは残っていたし、コカ・コーラ目的の「窃盗」の可能性のほうが高いんじゃないかな、と思います。暑かったし、ゴミを拾って歩くのはけっこうな労働だろうし、あるいは、すれ違いざまに発した言葉は「それゴミだよね?もらっていいよね?」だったのかもしれない。今となっては真相はよくわかりません。しかし、自らの体験として、これだけは自信を持って言えます。インド人は子供からしてとっても「アグレッシブ」。

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